綾子は頻繁に家に来るから、三人用ソファーの右端があいつの定位置。今も潰れたシュークリームをつつきながら、クッションを抱えて座っている。
左が俺。
俺ら二人の間にはちょうど一人分の隙間があって、ここはまだ帰って来ない慎兄ちゃんの場所だ。
「ん」
「は?」
突然差し出された、クリームが豪快にはみ出たシュークリーム。
ちなみに既に二個め。見かけ以上に腹に溜まる。
「もう一個。」
「馬鹿、おまっっ!こんな甘ったるい、しかも潰れたやつ、三個も食える訳ねーだろ!」
「はあ!?潰したのは綾瀬のせいなんだらから、責任持って食べてよね」
「お前が強情なのが悪いんだろが。自分が食え」
「やだ。太っちゃう」
「太れ太れ、デブ」
「何ですって?」
綾子が拳を構えたので、俺は仕方なく食うことにした。
「むぐ?!」
突然口の中に甘みが広がって、驚いて前を見ると、ムカつくほど満面の笑みを浮かべた綾子。
シュークリームを押しつけられた形。
悪戯っぽく笑う綾子は、やっぱり無駄に可愛かった。
(やべー)
三崎にあんなこと言ったけど
実は俺の方がMかもしれない。
