苛性ソーダ


「あーやせっ」

振り向いたら、まともに浴びた太陽で眩しかった。

十二月も半ばなのに今日は妙に天気が良い。

どこからか甘い香りがして、俺は顔を上げる。セミロングの黒髪が風にさらさら揺れていた。


「綾ちゃん!」

俺より先に反応した三崎が、渡り廊下までに駆け寄る。

同じクラスの綾子が、手すりから身を乗り出して手を振っていた。

「さっき、ここ、綾瀬先輩いなかった?」

綾子は走ってきたのか軽く息が途切れ途切れで、頬が赤い。綾子は色白だから、走ったり緊張したりするとすぐ顔に出るって最近発見した。

「いたよ」

「遅かった~」

「綾瀬先輩になんか用だったの?」

「う~ん、そういうんじゃないけど…」

ただ、会いたかった。

はにかむ綾子はそう言ってる気がした。

「俺が伝えとく?」

「…え、あ、…………あのさ今日…」

綾子は手で額を覆うようにして俯く。これも最近発見した、綾子が恥ずかしがってる時の癖。

「今日綾瀬の家行っても良い?」

「えぇっ!嘘!お前らそういう関係?うっわ、エロっ、なんかエロい!」

早速茶化してきた三崎に、俺と綾子で二発くれてやった。