「優っ」



昼休み。

飛んでいったサッカーボールを追いかけにいったら、慎兄ちゃんがいた。

「綾瀬先輩!」

「綾瀬先輩お久しぶりです!」

続々と、さっきまでサッカーをしていた友達も集まってきた。上の方で、窓から顔を出した女子がキャーキャー言ってる。

これはお決まりパターンで、慎兄ちゃんの周りにはよく人が集まる。

そんな様子を見てるとこっちまで誇らしくなる俺、やっぱブラコンなんだって改めて認識。


「優はサッカーが好きだな」

「慎兄ちゃんもじゃん」

「俺は見るのが専門だからな~。ちょっと貸して」

慎兄ちゃんは俺からボールを受け取ると、その場でリフティングを始めた。上の女共の黄色い声が高くなる。

見る専とか言いながらサラッとやってのける所が、やっぱり慎兄ちゃんは凄い。

「よっ、…結構難しいもんだな」

空中で綺麗な弧を描いて、ボールは俺の腕に収まった。


「優作羨ましー」

「は?」

親友の三崎がもたれ掛かってくる。これもお決まりパターン。

「綾瀬先輩が兄貴なんて最高じゃん!先輩~、俺も先輩みたいな兄貴が良かった~」

「ははっ」

慎兄ちゃんが笑って、俺も笑った。