「優、綾送ってってくれないか?」
「…俺?」
時計を見ると午後8時。
「今すっげーいいとこなんだけど…」
嘘だ。さっきからテレビの内容なんか全然入ってない。
ただ嫌そうにしとかねーと綾子のことバレたりしそうじゃん。
そんなんでバレるわけないけどな。
「女の子一人で歩かせられないだろ」
「そうよ優。慎とは逆方向なんだから」
慎兄ちゃんが毎晩通ってる塾は綾子の家とはおもいっきり反対で、夜遅くなったら俺が綾子を送っていくことがある。
本日もそのパターン。
「優、大事な娘をよろしくね」
「悪いな優」
玄関で見送る母さん。
慎兄ちゃんとは最初の交差点で別れた。
本日二回目の綾子と歩く帰り道。
最初のうちはポツポツしゃべってたけど、もうシュークリームもないから、言い合うネタが切れた。
「……」
ああ、なんか、
切ねー。
「…綾瀬?」
