「さて、イリアさんの作ったタルト、食べてもいいですか?」
「もちろんです!」
上機嫌をとうに越えて天にも昇る気持ちなイリアはタルトを皿に移す。
「いただきます」
「どうぞ召し上がって下さい」
「……美味しい」
タルトは食べるときにボロッとなるのがお約束だが、どんな魔法なのかちゃんとタルトの食感なのに形を保っている。
味も、甘すぎないのがフルーツの甘みをより引き立てている。
ぱくぱくと口に運んでいた月はイリアが唐辛子をかけた手のまま止まっていることに気がついた。
「イリアさん?」
「……ホワイトクリスマス」
「え?」
「ホワイトクリスマスですよ!月様!!雪が降っています」
「どうりで寒いわけですね」
月は子犬のように窓へと駆け寄るイリアを追いかける。
イリアは曇ってしまっている窓を開けた。
途端に冷気が部屋を駆け抜ける。
体を震わせる月に何故か持っていた上着を着せて。
「月様、雪ですよ。明日には積もってるかもしれませんね」
「そうですか」
「……失礼します」
そう言ってイリアは月の手を取った。
そのまま窓の外へ導き、雪をその手に降らせる。
「……冷たいですね」
「雪ですから」
「そうですね」
二人の少女は顔を見合わせて笑い合った。
深々と降る雪の中、二人の少女はこの時が終わることを惜しんでいつまでも語り合っていた。