「今日のクリスマステロ、楽しかったですね」


「はい。月様が楽しまれたのならば、私も楽しいです」


「……追試にかかった生徒、かからなかった生徒両方が楽しめて良かったと思います」


「はい。スペシャルバカはもっと勉強すべきだと思いますが。もちろん月様までとは言いません」


「…………いつもは見かけない生徒に会うことができました」


「はい。ですが、月様が望むのならばいつでも私が見つけだします」


「………………教員の方々も隅で飲んで楽しんでいたようですし」


「はい。生徒も若干混じっていたようですが。きっと、月様はお酒を飲むお姿も美しいのでしょうね」


「……………………イリアさん」


「何でしょう」


「いつもそうなのですか?」


「そう、とは?」


「なにを考えていても私のことが出てくるんですか?」


意外なことを聞かれたようにイリアは月を見つめたまま動きを止め、まばたきの回数が上がった。

それを知ってか知らずか月は黙ったまま。


「え……あ。えっと」

何故か狼狽してイリアは困っていた。


「答えにくい事でしたら特に答えは要りませんよ。気になっただけですので」


「いえ、その。……考えたことも無かったものですから」


「そうなんですか?」


「……はい。いつでも月様を想い、月様の為だけに動く。それだけですから、いつも月様の事を考えている……のかも知れません」


「……そう、ですか」


「はい」


無言の時が過ぎる。

カチャカチャと食器が当たる音だけが耳に届く。


「…………もっと、自分の為に時間を使ってもいいんじゃないですか」


ぽつり。

月の唇から言葉が発せられた。

その言葉にイリアは笑う。


「使っています。自分の為に、そのためだけに」


「……?」


「私は、月様のお側に仕えることが幸せですから。それが私の望みであり、願いです。何があろうともそれは変わりません」


「でも、それは」


「月様。私は月様を愛しています。愛する人と一緒にいられることは幸福です」


何というか、見ものだった。

月は光を映さない瞳をいっぱいに見開き、耳まで真っ赤にしてイリアを見つめたのだから。

ひとしきり眺めた後、微笑みながらイリアは言った。


「嘘ではありませんが、そんなに動揺する事でしたか」


「イリアさんが言うと冗談に聞こえませんからっ!!」


「嘘ではないと言いましたよ」


「イリアさんっ」


「すみません、楽しくてつい……」