彼女の前には、紙が一枚。 「か…なた?」 座った彼女が震える声で、紙を凝視している。 俺はそれには答えず、 「――早く書いて」 “婚姻届” 空欄は、一部分だけ。 皇の名前と俺の名前は、埋まってる。 後は、妻の欄に楓の名前を埋めたら…… 「かな「ほら、早く」 お前は、俺から二度と、離れられなくなる――。 見上げる彼女。 その瞳をまっすぐ受け止めて、 「――俺と、結婚しろ」 逸らさない、彼女の瞳。 ――お願いだから 頷いて…… .