ハチミツ×シュガー



 ふわりと香る、俺と同じ匂い。


 ――理性、保つかな、俺。

********


 ソファーに足を組んで座る俺の前には、シャワーを浴びて水を滴らせた髪をそのままに、膝立ちで俺の腕を掴む彼女。

 ふわりと香る彼女の香りに、湧き上がる感情を必死に止める。




「かっ彼方! これ、何?!」


 真っ赤な顔で瞳を濡らして、必死だ。



「何って?」


 ノートパソコンを閉じながら、俺はさらりと言う。



「これっ これは何っ!」


 左薬指にキラリと光るリング。



「婚約指輪だけど?」


 彼女の言葉を遮りそう言うと、腕を掴んで彼女を立たせる。


「そんな事より…」





 ――断らないで…。


 ――拒否、しないで。




 俺の心臓は、壊れそうなほど早鐘を打つ。彼女は展開の早さに、声が出なくなったみたいだ。
 俺に掴まれたまま、引きずられる様について来る。



「これ、書いて」


 ダイニングテーブルに半ば強引に座らせると、目の前に紙を置いた。