ふわりと香る、俺と同じ匂い。
――理性、保つかな、俺。
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ソファーに足を組んで座る俺の前には、シャワーを浴びて水を滴らせた髪をそのままに、膝立ちで俺の腕を掴む彼女。
ふわりと香る彼女の香りに、湧き上がる感情を必死に止める。
「かっ彼方! これ、何?!」
真っ赤な顔で瞳を濡らして、必死だ。
「何って?」
ノートパソコンを閉じながら、俺はさらりと言う。
「これっ これは何っ!」
左薬指にキラリと光るリング。
「婚約指輪だけど?」
彼女の言葉を遮りそう言うと、腕を掴んで彼女を立たせる。
「そんな事より…」
――断らないで…。
――拒否、しないで。
俺の心臓は、壊れそうなほど早鐘を打つ。彼女は展開の早さに、声が出なくなったみたいだ。
俺に掴まれたまま、引きずられる様について来る。
「これ、書いて」
ダイニングテーブルに半ば強引に座らせると、目の前に紙を置いた。
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