ハチミツ×シュガー




「彼方…」


 彼女が泣きそうな顔で、一歩、近づいた。


「図書館はどうした?」
「――っ」


 俺の低い声に、彼女の足は止まる。


「友達といたんだよな?隣の奴が、友達なのか?」



 彼女は俯いて、何も答えない。






「はぁ… お前、本当なんなの?」


 俺は連日の寝不足、体力の限界のせいで、頭がおかしくなってるかもしれない。




「……もう、いいや。

 じゃーね、如月さん」



 ――だから、こんな言葉が出てくるんだ。



「彼方…っ!」



 後ろから楓の呼び声が聞こえる。






 俺は振り向かず、人混みに紛れて歩き進めた。