ハチミツ×シュガー




 その姿は、さっき電話で話した愛しい女。



 ――図書館で勉強するって、言ってたよな?


 うちの大学はここから5つ先の駅にある。確かに、来れない距離じゃないけど…。

 おかしいよな。
 こんな場所にいるなんて…


 俺は先ほどの彼女の電話の内容を思い出しながら、道路向こうの彼女の姿をジッと、見ていた。


 大学生になって、少しだけ髪の毛を茶色くした彼女の髪が、風で流されてる。

 薄化粧をした彼女のキレイな肌。
 ちょこんと可愛らしくついてる唇には、淡いピンクのグロスが塗られていて……
 控えめに、その存在を現していた。




「――…っ」


 声を、かけよう。


 素通りするなんて、出来ない。

 彼女がなぜ俺の誘いを断ったのかなんて、今はどうでもいい。


 ただ、その髪に。

 肌に、唇に、触れたくて――…





 気付いたら、走り出していた。