『楓?』
「もしもし」
私の後ろのすぐ上から携帯から漏れた皇の声と西城くんの声がする。
「……っ ちょっ」
振り向き携帯を取り返そうと手を伸ばすけど。
西城くんが後ろから伸ばした手で私を抱き寄せるから、身動きできない。
『――西城…
何で楓といるんだ?』
皇の少し低くて緊張した声が耳に入った瞬間。
私は体を強ばらせた。
「……今から送っていく。
30分もかからないから、怒らないでやってくれ」
皇の質問には答えず。でも、前みたいにトゲトゲしくない声色。
『――…分かった』
皇も何かを察したのか、静かに返事をした。
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