「はぁ――…
……良かった…」
私を抱きしめると、頭上で大きく深呼吸をした。
怒っていたはずの、彼の『良かった』の一言に、頭の中でハテナをたくさん作っていると。
「斉藤の所に行かなくて良かった……」
「――…っ」
彼の呟いた言葉に、慌てて顔を上げるけど。
「――見んなっ」
さらに私を深く腕で抱きしめるから。
一ミリも動けなくなっちゃった。
「……俺、いま凄く恥ずかしい事になってるから……見んなよ」
――彼が、大好き。
私を抱きしめながら声を震わせて……
『好きだ』と言わなくても伝わる気持ち。
……幸せすぎて、涙が溢れる。
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