その瞬間。


 握っていた携帯が、私の手を離れた。




「斉藤……悪い。

 コイツは渡せない。


 他の奴になんて、渡したくないんだ」









『……そうだよ、な。

 ……最初から……分かってたんだ。
 彼方じゃなきゃ、ダメな事くらい。


 それでも……。
 本当に、如月が好きだったから――…』






 小さく漏れた斉藤くんの声。



 こんな私を好きだと言ってくれたのに……。


 私は――。