「――嫌だ。 俺は如月が好きだ。 だからちゃんと俺を見て話を聞いてほしい」 そう言った斉藤くんは、西城くんを睨みつけていた目を私に向け、 「頼むから……逃げるなよ」 ――斉藤くんの真っ直ぐな瞳に……震える声に。 私はもう、掴まれてる手を、振りほどけなかった。 「……ふざけんな」 バシャッ ……聞こえた瞬間。 ――私は、宙に浮いた。 「――彼方っ!」 「ちょっ…え…っ!」 私の視界は誰かの黒い背中。 しかも、逆さ吊りのようになってる。 .