「……うん!行こうか」
……明るく彼に言うと、ホッとした顔で、トレーを持ってくれた。
「もう始まってるかもな」
何事も無かったかのように、斉藤くんがチケットを出し、その後に私も続いた。
私達の前には、誰もいない。
受付を通ると、何部屋かある内の一つ、大きく6と書いてある扉の中に入った。
細い坂道を上ると、大きなスクリーンに、大きな客席が広がる。
「ああ、やっぱり人多いな」
溜め息混じりで先に行く斉藤くん。
私も慌ててついて行った。
私達の席は少し上の方の中央。
通路側に私を座らせて、中に斉藤くんが座る。
「……まだ宣伝で良かったな」
小声で話しかけてくる彼。
「そうだね」
私も小声のせいか、二人頭を近づけて会話をした。
それに気付いた斉藤くんが顔を赤くしてサッと離れたけど、気付かない私は、顔を傾ける。
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