「あ…」 覆われた手が、震える。 「如月……」 私の名を呼ぶ声。 私の耳元でゆっくりと、囁くような甘い声で―― 「……頼むから、逃げるな」 そう言って、私のすぐ後ろから片方の手を腰に回すと、優しく抱き締めてきた。 身長150センチの私が、180センチ近くある彼に、すっぽり包まれてしまった。 息をするのも忘れてしまうくらい、心臓は早鐘を打つ。 「西城、くん…」 .