「――…なんで…」 私から少し離れた場所で西城くんの呟きが聞こえた瞬間。 ガラガラッ 「――楓っ!」 彼の震えていた声が、かき消された。 皇の、呼び声によって。 「楓! 倒れたって聞いて…っ」 駆け寄る皇に真弓がサッと私から離れる。 「皇…っ」 皇が額に汗して私をマジマジと見た後、安心したように抱き締めてきた。 「――良かった…」 皇のつぶやきに、今まで我慢していた涙が皇の白いシャツを濡らす。 「こ、う……皇…っ」 .