「俺から逃げやがって」 「いっ いひゃい…」 両頬を思い切りつねられた。 一瞬歪んだ顔は、既にそこになく。今は無表情というか、もしかしたら少し、怒ってるような顔。 「……斉藤に頭撫でられやがって」 ――どうしよう。 不謹慎かもしれないけど。 彼の言葉が嬉しくて。 彼の独占欲が心地良くて。 「……バカ女。何にやけてんだよ」 ――そんな私の心情なんて、きっと彼にはバレてる。 .