「わ、かんないっ」 もう意地だ。 ……でも。 私の意地なんて、彼にかかったら。 「――俺を見ろ」 無理やり私の両頬を包んで顔を上げさせる。 ――ほら。簡単に…… 「――っく…」 「涙と鼻水ですげー事になってるぞ」 「ひ、酷い…」 恥ずかしくて、苦しくて。 彼の胸を押し出すけど……ガッチリ掴んだまま、放してくれない。 「……酷いのはお前の方だろ」 そう言った彼の顔が、一瞬で歪んだ。 .