「え……」 涙が一筋、流れた。 「――答えなくていいよ。 ……俺、部活戻るわ」 一瞬、悲しそうな顔をしたけど。次の瞬間には、彼は頭をガシガシ掻いた。 「斉藤くん…」「何かあったら!」 私の言葉を大声で遮り、次の瞬間。 「――俺に言えよっ! ……力になるからさ!」 そう言うと、いつもの笑顔で私を置いて走って行ってしまった。 だんだん彼の足音が遠ざかっていく。 ……夏の匂いと共に、彼の埃っぽい匂いが紛れてた。 .