最後の段から、ゆっくりと下りた。 「……如月」 斉藤くんの呼びかけに応じることが出来なくて。 振り返ったら…… 階段にはもう、誰もいない。 すれ違い様、西城くんは私の左手をキツく握った。 ……ほんの、一瞬の出来事。 掴まれた手を……胸で抱き締めるように、反対の手で握る。 思い出してしまった。 彼の手の温もりを……。 男の子らしい、大きな手。 男の子らしくない、キレイな長い指。 .