皇はそのまま私達を踊場に置いて、先に行こうとする。 「――皇っ」 私の呼び声に、ゆっくり振り向いた。 「あ、の…」 怖い。 拒絶されたわけじゃないのに……ただ、朝会わなかっただけなのに。 「今日のお夕飯……和食でいい、かな…?」 声が、震える。 皇が切れ長の目を細めた、次の瞬間。 「楓の煮物は好きだ」 笑顔で答えてくれた。 「……分かった。煮物、ね?」 その言葉に私も笑顔になると、『じゃあ』と今度こそ去っていく皇。 .