あぁ…。

 まさか自分まで同じ質問されるなんて……


「水族館に、行ったの…」



 段々と小さくなる声。

 皇の顔を見れず、空になったマグカップを両手で持ちながらジッと見てる私。




「……水族館、ね」


 皇が小さな声で繰り返した言葉。

 その声に目を向けるけど。皇はマグカップを見つめたまま、私を見ない。



 彼には分かっていたのかもしれない。

 相手が、誰なのか。





「明日も学校だし、もう寝よう?」


 そう言って立ち上がると、手のマグカップを取り上げそのままキッチンに向かった。
 私は何も言わず、皇の後ろをついて行く。




「じゃあ、おやすみ」

「……おやすみ」

パタン


 柔らかい笑顔を浮かべたまま、皇が部屋の扉を閉めた。

 私も自分の部屋に入り、そのままベッドに横になった。





 その夜、皇は私の部屋に現れなかった。