「――如月っ!」




 みんなとは違う、逆へ走った私。



 すれ違う人が何事かと見るけど。

 そんな事、気にしてられない……!




「はぁっ、……はぁっ」


 無我夢中で、気付いたら、さっきいた深海魚コーナーの中間、ベンチがある場所まで走っていた。



「――おいっ!」

グイッ
「ひゃあっ」


 声と同時に腕を掴まれ、大きい丸い柱に押さえつけられてしまった。



「……はぁ、…はぁっ」


 私はこんなに息が切れてるのに……目の前の西城くんは、息一つ乱れてなくて。




「なんで逃げるんだよ」


 感情を押さえてるような、低い声が頭上に響いた。


 私は赤い顔を見られたくなくて……泣きそうな顔を、見られたくなくて。


 そのまま俯く事しか出来なかった。