エレベーターを降りてエントランスを出ると…… 「今日も雨……」 朝なのに、どんよりと黒い雲が広がっていて、薄暗い。 皇は青い傘を、私は赤い傘を差し、歩き始めた。 「楓、今日一緒に帰らないか?」 「ご、めん。今日は図書室に……」 「そうか。ならいい。 ゆっくりしとけ」 そう言って、皇は優しく微笑んでくれた。 「ありがと……」 ――嘘じゃないのに。 ……後ろめたい、私の心。 .