その日の夜、あたしは夏休みがあけると

すぐにある体育祭の練習で必要な

ゼッケンをつくることにした。

その際に必要な緑の油性ペンを探していた。


「お母さん、緑の油性ペンってなかったっけ?」


お母さんは少し困った顔で言った。


「去年も買ったじゃない、どこにしまったのよ」


あたしは思い出せずにそこら中を探していた。

お母さんも一緒になって探してくれたが、

どこにも見当たらなかった。

するとお酒を飲んでいたお父さんが、


「なにをがさがさしてんねん!
 どこやってん、ないんやったら買いにいけや!」


と急に怒鳴りだした。

あたしのお父さんは小さいころからよく怒鳴る。

あたしはそんなお父さんが好きではなかった。

きっと、お酒も相当入っていたので

急に怒鳴りだしたのだと思うが、

その時のあたしは、びっくりしたのと同時に自分の中で

必死に繋ぎ止めていたなにかが「ぷつんっ」と切れてしまった。