シリウス


呆れた真菜は、ため息をついた。

「あのねぇ、夏樹くん、あたし、今ね、自分の話をしたんだからね?」


3杯目のコーヒーがとどいた。

夏樹はドサッと砂糖を入れた黒い液体を飲み干した。


真菜のため息など聞こえないようだ。


「あ、そう。じゃあさ、その女って、誰?」

「その女って?」


「その人だよ。女の子が真菜さんなんでしょ?それなら、その女、誰?」

夏樹は、捲し立てるような早口で続けた。


「その人、真菜さんを置いてった人、誰なの?」


「さぁ、知らない」

真菜の目が僅かに泳いだ。

嘘だ。本当は知っている。


「嘘だね」

夏樹が 空を仰ぎながらまた、独り言のように呟いた。


「知らないの。本当よ」


「嘘だよ。真菜さんは分かりやすいから」


冷静にぽつりぽつりと話す夏樹の態度に、思わず真菜は叫んだ。


「うるさい!夏樹には関係ないでしょ!」