春の暖かな日差しの香りが鼻をくすぐる。 あたしは深呼吸をして、今日で最後の制服に袖を通した。 鏡を見る。 3年前の入学式、不安そうに鏡を覗く、あたしに笑いかけた。 あの頃は大きかった制服も、やっとちょうどいいサイズだ。 呉服屋のおばさんの採寸は、間違ってはいなかったらしい。 「いってきます」 清々しい青空。 薄ピンクに染まる桜の木。 あたしは今日、「卒業」します。