シリウス


俺は小児病棟に向かって走っていた。

何度も注意されたが

そんなのどうだっていいんだ。


ずっと、美歩と俺が会った時を思いだしていた。


美歩には

数年前に亡くなった、俺と同い年の兄がいたそうだ。


笑うとえくぼができる、優しい兄が。


記憶喪失の美歩が、家族についての唯一の記憶が

「兄ちゃんのえくぼ」なんだそうだ。


美歩が俺と出会ったのが、1ヶ月前。

派手に転んだ美歩を、笑いながら俺が立ち上がらせた時だ。


今、美歩を一人にしちゃダメだ。

その一心だった。