過去より、もっと良い恋をあなたと・・・

五十嵐に撫でられた時、涙が出そうになった。

でも、堪えた。

なるべく、心配をかけたくなかったから・・・

『昨日ね、誠人・・・谷地先輩が留学しちゃうことを聞かされたんだ。』

五十嵐は頷きながら私の話を真剣に聞いている。

あの頃と変わらないね。

私は話を続けた。

『ドイツに行くんだって！お父さんの転勤も重なっちゃったみたい。』

『うん。』

ヤバイ・・・

涙が零れそうだよ。

すると、五十嵐は私の頭を自分の胸の中に収めた。

『泣きたかったら泣けよ・・・』

やっぱり、バレちゃったね。

『ありがと。でも、話し終えるまでは泣かない！』

『無理すんなよ？』

『うん！』

話し終えるまでは泣いちゃいけない。

泣いたら、誠人が安心して留学出来ない気がしたから・・・

『それで、別れたんだ。』

五十嵐は無言だ。

少し手に力が強まったような・・・

『早くて６年後には帰ってくるって。その時、まだオレのことを好きでいてくれたらまた付き合おうって言ってくれた、んだ・・・』

話し終えた私は、五十嵐の腕の中で泣いた。

まるで、小さな子が母親に縋っているかのように・・・

そんな私を五十嵐は、黙って抱きしめていてくれた。

あなたは、どうして私に優しくするの？

得なんてしないのに・・・

『ック・・・五十嵐、ゴメンネ。』

『なにが？』

『泣いちゃって。もう大丈夫だから・・・！？』

五十嵐！？

なんで私にキスなんて・・・

２人の唇が離れた。

『ど、うして？』

五十嵐は、再び私を強く抱きしめた。

『俺は、お前に悲しい思いなんてさせない！』