・・・え?




 大樹の声だった。




 聞き間違えるわけがない。




 『・・・父さん』





 父さんも呆然としている。




 『ありがとう。僕に、この仕事をやらせてくれて。芦沢有希の息子って言わなかったから、少しだけ・・・社会の厳しさを思い知れた。死ぬまでに、いい思い出ができたよ。・・・ってこれを見ているとき、僕は死んでるか』





 笑顔で言う大樹に胸が締め付けられる。




 父さんは、こぶしを握り締め涙を流していた。




 『母さん。僕の母親で・・・周りから変な目で見られたよね?いつも母さんが悲しそうな顔をするたびに、辛くて仕方がなかった。でも、そんなこと隠して僕の前では笑ってくれてありがとう・・・。元気が出たよ。もう、僕はこの世にいないけど・・・これからは僕の前で泣いてもいいからね』




 母さんはベッドに向かって泣きわめく。




 『葵ちゃん、星。やっと、わかった気がするよ。いつか言ってた、仕事よりも護りたいもの。もう僕は守れないから。星、葵ちゃん・・・まだ公表はしてないのかな?どちらにせよ、幸せになってね』




 葵ちゃんはその場に泣き崩れた。その体を星が支える。彼も、泣いていた。