「伊織っ!!!」大きな声で私の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。私はその声の方を見た。紛れもなく俊哉先輩で…でも稲森先輩は私を離してはくれなかった…。

「お前何しとんねん」俊哉先輩はキレた口調で稲森先輩の体を引っ張る。やっと稲森は私から離れた。でも先輩は無表情。
「お前、本間に伊織のこと守れてた?俺と約束したやん。なあ、守れてたんか?」今度は低い声で稲森先輩が俊哉先輩を睨む。

「え…?約束…?」私は小さな声で呟いた。でも二人には届いていない。

「ごめん…伊織…今、亜美ちゃんと満里子ちゃんが電話くれたんや。准弥からの伝言を伝えてもらった。伊織があいつらに嫌がらせ受けてるて全然気付かんかった…」
私は先輩を見つめながら話を聞いていた。

「俺、ほんまに最悪やな…目の前の試合とかサッカーのことばっかり…伊織のこと守られへんかった。俺、最低や…」
先輩は悲しそうに笑うのを見て胸が苦しくなった。