「あ、ここです。私の家」一戸建ての家を指差すと先輩は足を止めた。

「でっかい家やな。お前んとこ金持ち?」
「ちゃいますよ。家だけです」さっきの言葉は幻かのように消えていく先輩の真剣さ。

「じゃ、俺行くわな」
「送っていただいてありがとうございました」一礼すると先輩はクスッと笑った。

「何ですか?!」
「いやーちゃんと挨拶できんねんなーて思って」
「もー!!先輩、私のことバカにしすぎですから」
「え?バカじゃなかったん?」

腹立つな、この顔。さっきはドキドキしてたのに……ドキドキしたのん取り消しや!

「稲森先輩きらーい」アッカンベーとして家の玄関を通る。

「バイバイ、伊織ちゃん」なんもなかったように手を振って自転車で行ってしまった稲森先輩。

「本間、調子狂うわ。私が好きなんは___




喜村先輩やのに」

10月やのに顔が熱くなってるんが自分でも分かった。