ギュッとヒサに抱きしめられるたび、あたしの大好きな匂いがあたしの鼻をかすめる。


甘い、桃のような香り。


その香りはあたしにヒサがそこにいるという安心感をくれる。


その香りに包まれながらあたしは深い眠りに落ちる。


たまに怖くなったりすることもあった。


朝起きたらヒサがいないんじゃないかって・・・。


だけど、目が覚めるとヒサがいて、優しく頭を撫でてくれる。


優しい眼差しであたしを見てくれる。


あたしだけを見てくれる。


至福のひと時だった。


あたしの小さな願いがかなうとき。


『その瞳にあたしだけが映っていればいいのに・・・。』


あたしは、欲張りになったのかな・・・。