俺は、留学してから今日まで、一度も日本に帰らなかった。

帰る必要も感じなかったし、帰ったって両親も演奏会で海外を飛び回っているから、家には誰もいない。

今回の帰国も知らせていない。

知らせたところで、どうというわけでもないが。

俺は、翌日の予定を考えて、横浜のホテルに泊まろうと決めた。

ふと気になり、後ろを歩くシオンに話しかける。

「シオンはどこに住んでるんだ?」

「えと、住んではいない。」

俺が、わからないという顔をすると、付け加えた。

「ホテルに泊まってる。」

留学生じゃないのか。

じゃあ、何?バケーション?って季節でもないだろうに。

「俺、明日のこともあるから、横浜のホテルに適当に泊まるわ。じゃあな。」

手をあげて、もう二度とあうことはないだろうシオンに背を向けた。

まあ、あんだけ綺麗な顔を見れなくなるのは惜しい気もするけど。

「じゃあ僕も同じホテルで良いよ。」

今度こそ頭を抱えたくなった。