拍手を後ろに聞きながら、俺たちは舞台の袖に入った。

主治医が飛んできたが、何とか大きな発作がでることはなく、点滴だけですんだ。

「無理するなっていっただろうが。」

俺が言うと、シオンは笑った。

「心配かけてごめんね。でもちゃんと弾けたでしょう?」

まるで、きらきら星を初めて弾けた、子供のような言い草に、俺も笑うしかなかった。

「ま、予想はしてたからな。シオン、お前やっぱり頑固もの!」

二人で大笑いした。

そしてシオンは言った。

「ひさぎ、ありがとう。本当にありがとう。」

そして俺の手を握った。

「僕、手術うけるから。」

俺は頷く。

「だから、忘れないで、僕の今日のこの手を。」

ぎゅっと握り締めた。

「ひさぎと奏でた、この手を忘れないで。」

そう言って笑いながら、泣いた。

「忘れねぇよ。…忘れるわけねぇだろっ…!」

俺は泣きそうになるのを堪えた。

「それに、忘れられたくなきゃ、ちゃんと手術うけてかえってこいよ。」

シオンは何度も頷いた。

握った手は、離さないまま、頷いた。