僕はショパンに恋をした

始めの和音が響く。

それだけで背筋がぞくっとした。

プログラムのい一番始めは、革命のエチュードからはじまった。

有名な曲だから、誰でも分かるだろうと選択したと言った。

シオンのピアノは優雅だ。

引き込まれずにはいられない危うさもある。

はげしい曲だが、短めの曲だ。

シオンの表情にも、辛そうなところはない。

大丈夫みたいだ。

少し安心して、また音楽に没頭した。

最後も和音で力強く奏でる。

観客たちは惜しみない拍手をくれた。

俺もシオンと視線を合わせて、笑いかけた。

素晴らしい演奏だ。

約束どおり、1音も聞き漏らさず、しっかり聴いた。

シオンにもそれが伝わったのか、シオンもまた笑った。

そして次の曲を、迷うことなく弾き始めた。