「ひさ…ぎ…?」

はっとしてシオンを見た。

「わりぃ…、起こしたか…?」

間抜けな第一声だ。

「ううん。ひさぎがショパンを鼻歌で歌ってるな〜って、夢の中で笑っちゃった。」

ふふっと、いつもの様に笑った。

俺が何も言わず、シオンを見ていると、またふわりと笑った。

「何がなんだか分からないって、顔してるね。」

「しょうがないだろ…。何が何だか分からないんだから…。」

少しふてくされ気分で返事をした。

「そうだね。ごめんね。」

シオンの声が、少しだけ震えた気がした。

「何からはなそうかな。」

よいしょと言って、体を起こす。

「おいっ…!無理すんなよ。」

慌てて手を貸す。

「大丈夫。いつものことだから。」

笑って言った。


「何から聞きたい?」

逆に問われて、困った。

困って返事を濁していると、シオンはまた笑った。

「ひさぎは優しいね。」