「……コレー、それ貸してみろ」
「あっ! アテナお姉さん…」
「どうせ帰れそうにもない、一緒に舞台とやらまで行こう」

苦笑気味ではあったもののコレーにそう言うと、コレーは笑顔で持っていたルールブックを渡した。
アテナは受け取ったそれを少し見つめてから、一先ずは言われた通りに裏表紙を光に透かしてみた。

確かに地図はあった。ただし、裏表紙に書かれていた元々の文字と細かい線で非常に見にくい。よく見てみると小さな文字もうっすらとあった。

「"詳しい地図は、従者の……椅子の裏"?」
「え?」

アテナの口に出した言葉に瞬いたコレーだが、すぐに空いている近くの青い椅子の裏を確かめた。体の小さいコレーは体勢を低くするだけで簡単に貼り付いていたそれを発見出来た。

「紙がありました!」
「中は?」
「ええと……"ハズレ"?」
「は? ハズレって……もしかして」

アテナも近くの椅子の裏を確認する、取り出した紙にはやはりハズレの文字が書かれていた。うまく行けそうだと思った矢先にこれだとアテナは不機嫌な顔を隠さずにハズレの紙を投げ捨てた。
一方、コレーは自分の席とは遠い側に行き、他の青い椅子の裏を探しているものの、さすがに全て残っているわけもなくどうしようかと困って俯いてしまった。

「あの」

コレーは掛けられた声に振り返る。
片膝をついている人物が先程の男性だと気付き驚いていたが、アテナの他に頼りに出来そうな人間が話しかけてきてくれたことへの安堵か、俯いていた顔をしっかりと上げて笑顔を見せていた。

「さっきの…」
「地図をお探しですか?」

男性は苦笑混じりに頷いたコレーに紙を差し出す、受け取った紙の見た目はハズレと同じだが開くと中には地図が描かれていた。


「え? これ、地図…ですよね?」
「二枚目を見つけましたので…お二人が見つけていらっしゃなければお渡ししようと思っていました。お納めください」
「あ、ありがとうございます!」

彼に助けて貰うのは二回目である、さっき言えなかった分も含めるようにしっかりと頭を下げたコレーに礼は必要ないという男性は傍から見れば奇妙な図ではあるが、コレーはすっかり元気を取り戻していた。