「どうしてもボクは一番でなくてはならないんだ、あいつを、あいつが転落する呪いをくれ」

そう哀願する彼はその手に大量の札を握り締めている。
たかが一高校生が持つには多すぎるような気もするが、身につけている制服は高い学費で有名な学校のそれである。おそらく政治家や医者の子なのだろう、と店主は納得した。
「わかりました、お客様。それでは、学業不成就の呪術式を用意しましょう。それではこちらの規約に納得されましたら契約書にサインをお願いします」
と、店主はクリップボードを客に差し出した。

利用規約と書かれた紙には「返品不可」や「効果は保証しない」にまぎれ一番最後に「人を呪わば穴二つ」と書かれている。だが、呪術式を買いに来る人なんて切羽詰まっていて、規約など詳しく読まずに簡単にサインをしてくれるものだ。
店主、柊ユキは走るボールペンを眺め、厭らしく微笑んだ。
「はい、ありがとうございました。それでは今しばらくお待ちくださいませ。」
メモとペンを取りだし、怪しげな魔方陣を書き始める。
「こちらに呪いたい相手の名前を、反対側にはお客様のお名前を」
「こ、これで本当に…あいつは………」
半狂乱になりながら男子高校生は名前を書く。
呪いは成立。

「それでは、効果がでるまで今しばらくお待ちくださいませ。お客様の恨みは相当なものですから、きっと効力を発揮するでしょう……穴二つ、とても深いものとなるでしょう」