「じゃあ、はい、あーん」
普通に食べさせてほしい。
確かに俺はそう願ったが、別に食べさせてくれなくていい。何故なら自分で食べるから。
「いいって」
「いやいや、クリスマスだし」
なんだその理由。
「いやいやいや、俺サンタだし」
「いやいやいやいや、俺トナカイだし」
いやいやいやいやいや。何だ。
「サンタがプレゼント貰ってもいいじゃん?」
そう言われ、フォークが突き出される。
え、何、これプレゼントなの?
よく解らないまま、このままだと避けても顔につけられそうだから、大人しく口を開ける。
するとさっき少し味わったのと同じ味が口の中に広がる。
美味い。
さすが人気店。
改めてその凄さを実感する。
これをあれだけ量産する店長半端ない。
小人たちよ、楽しみに待ってろよ。今年のケーキは最高だ。
もう一口。と続けて出されるケーキの誘惑には負け、しかし照れ臭さに目を背けながら受け取る。
だってここ、サービスエリアかどっかだろ?
灯りも点けてるし、外から丸見えなんじゃないか?
誰にも見られていませんようにと願いながら窓の外を見ると、そこに広がるのは一面の銀世界。
あるだろう外灯も何も見当たらない。
他の車も居ないし、眠る前のような吹雪でもない。
あっという間に天気が変わったとしても、この風景は無い。
静かすぎる。
「……ここ、どこだ?」
そう尋ねると、トナカイはにこにこ笑って答える。
「メリークリスマス」
……いや、答えになってねえし。



