桜が泣いた。


あの桜が俺達の前で初めて泣いた。



それだけ俺達は桜を不安にさせていたんだ。



桜は強くて頼りになる総長だと思っていた。

けど目の前の桜は、ただ強がっていた泣き虫な総長だった。



普通、泣いている所だけを見たら呆れるだけだ。


けれど俺はこの人を守りたいって思った。

こんなにも俺達を想ってくれている人を想って泣いてくれる人を。









―――…昨日



「大和、」


「こうするしか無いだろ」



確かにな。

大和の腕の中には左腕を真っ赤に染めた桜の姿。


目を閉じている桜はさっき大和が鳩尾を殴って気絶させた。



「寿」


「場所は分かってる」



桜が聞こうとしたこと。闇月の居場所。

それは既に解っていた。


でもあの怪我で行かせる訳にはいかない。そんな事したら他の華龍のメンバーに合わせる顔がない。



大和がいてくれて良かった。



「相楽、桜を頼む」


「…まあ、後で桜に怒られれば良いさ」



桜を美樹さんに任せて俺達は闇月が溜まり場としている場所に行こうとした。



「――…大和」



そこへ来た大和の仲間。



「尚。ちょっと、行ってくる、アイツ等を頼むぞ」


「イヤだ」


「…はぁ?」



あの大和に反抗した。それも即答。

大和も、勿論その場にいる俺や飛鳥、美樹さんも唖然としている。



「俺も行く」


「駄目だ。お前がいても邪魔になるだけだ」



確かに。
弱い奴がいても邪魔になるだけ。それは大和が正しい。

桜がいなくても大和がいれば俺達三人で倒せるだろう。



「………っ」


「チビ共、見てろよ」



中学生の事だろう。

俺と飛鳥を此処まで案内してくれた二人のうち一人は、まだ中三だって言っていた気がする。