『……で、よかった』


「え……?」


『無事でよかったっ』



怖かったんだ、本当は。


姫蝶の夢を見ている途中。これが夢だって気がついた時。

目を覚ました時にアイツ等がいなかったらどうしようって。


〝あの時〟みたいになってたらどうしよう、って。

怒鳴ったりしたけど、強がりで。本当は皆がいて良かったって安心した。



安心したら涙が出てきた。それは止めようとしても止まらなくて、あたしの頬を流れた。



「あーあ。お前等、桜泣かした」


『……あれ?大翔?』


「おう!久し振りだな」



半笑いであたしの目の前に現れたのは前華龍総長の大翔(ヒロト)。
大翔の登場で止まらなかった涙が止まった。



『え、何で?』


「いやー、相汰から連絡貰ってさぁ。桜がこっちに帰ってきてるって聞いたから俺も来てみた」


『いやいや、来てみたじゃないから。え、相汰って?』



頭の上に沢山ハテナが浮かぶ。



「ん?相汰に聞いて無いのか?」


『は…?』


「俺の兄貴なんですよ」


「俺の弟なんですよ」



二人が互いを指さす。

あたしは茫然として固まる。


相汰が大翔の弟で大翔が相汰の兄?



『いや、ないない』


「ちょ?!」



あたしは思いっきり否定する。
だって、あんな子犬の相汰があの大翔の弟?

あり得ない。