「うッ……ぐすッ……」

「あ~、なんだ……悪かったよ。……ほら、ハンカチ」

すすり泣く葵を前にして上手く言葉が浮かばず、とりあえず常備していたハンカチを彼女に渡してみる。

すると、半ば奪い取るようにしてハンカチを手に取り、俺に背を向けて涙を拭った。

ついでにーー

「ーー!!」

……鼻かみやがった。

「……はい」

「普通、洗って返すとかそういう流れだろ、そこは……」

潤ってらっしゃるよ。

そりゃあ、もう滴るほどに……


「き、今日のところはここで引いてあげます!命拾いしましたね!!」

言うや否や、正義の味方にフルぼっこにされた悪党のように走り去っていく葵様。

「結局、何がしたかったんだろうな」

「?」

やれやれ、何か数ページくらい無駄にした感じだ。


チャイムが鳴り響く中、誰に語るでもなく悟っていた奴がいた。







っていうか、俺だった。