「卓ちゃんってモテるんだよねぇ?」
「はぁ? シラネェし」
「恵梨香ちゃんって、仙台の幼なじみの子?」
「ちげぇよ。なんだよ仙台の幼なじみって? 男ばっかだし」
「へぇ、幼なじみ以外にも女の人がいるんだぁ。ねぇ、恵梨香ってだれ?」
「だれだっていいだろ!」
「よくない!」
「はぁ? おまえ、何なんだよ! そんなウザってぇこと言うやつだったか?」
卓ちゃんの声が大きいから、店員さんがこっちを見てる。でも止まらない。
「卓ちゃんは聞かないと何にも言ってくれないじゃん!」
「関係ねぇことは言う必要ねぇ!」
「関係なくない!」
「あー、はいはい、めんどくせぇ。オレ、帰るわ」
卓ちゃんは、スタスタ入り口に向かって歩いて行って、あっという間に店からいなくなった。店員の「ありがとうございましたぁ」という声が耳に張り付く。
追いかけたくなった。でも追いかけたくない。こんなときに美久の携帯がなった。
《週末は泊まりにいってもいいかい?》
勝久くんだ。なんで泊まりになんか来るの? どっかいっちゃうくせに。抱いてもくれないくせに。
《友達が泊まりにくるかも》
《そうなんだ? 明日もムリで、週末もムリだと、来週まで会えないね。寂しいな》
外国行っちゃったら、もっと会えないよ。
勝久くんになんて返事しようか考えるのも面倒になって、「もう帰ろう・・」って小さくつぶやいて、お店のレジに向かった。
「七千四百六十円になります」
卓ちゃんはやっぱりお金も払わずに帰ってた。二人分の代金を一人で払って泣きそうになる。店員さんが同情の目で美久を見てるみたい。
新宿駅の東口から地下への階段を覚束ない足取りで下りる。人の流れに逆らってるのか、流されてるのか、よく分からないくらいたくさんの人が行き来してる。その大勢の中を一人で歩く。
卓ちゃんと歩いて帰る道だったのに・・。
卓ちゃんと歩いたら楽しかったはず。
勝久くんが海外に行くって言わなきゃ楽しかったはず。
弘子がもうちょっと相談に乗ってくれてたら何か違ってたかも。
美久の周りは、美久のこと分かってくれない人ばっかり・・美久はただ・・幸せになりたいだけなのに。
「はぁ? シラネェし」
「恵梨香ちゃんって、仙台の幼なじみの子?」
「ちげぇよ。なんだよ仙台の幼なじみって? 男ばっかだし」
「へぇ、幼なじみ以外にも女の人がいるんだぁ。ねぇ、恵梨香ってだれ?」
「だれだっていいだろ!」
「よくない!」
「はぁ? おまえ、何なんだよ! そんなウザってぇこと言うやつだったか?」
卓ちゃんの声が大きいから、店員さんがこっちを見てる。でも止まらない。
「卓ちゃんは聞かないと何にも言ってくれないじゃん!」
「関係ねぇことは言う必要ねぇ!」
「関係なくない!」
「あー、はいはい、めんどくせぇ。オレ、帰るわ」
卓ちゃんは、スタスタ入り口に向かって歩いて行って、あっという間に店からいなくなった。店員の「ありがとうございましたぁ」という声が耳に張り付く。
追いかけたくなった。でも追いかけたくない。こんなときに美久の携帯がなった。
《週末は泊まりにいってもいいかい?》
勝久くんだ。なんで泊まりになんか来るの? どっかいっちゃうくせに。抱いてもくれないくせに。
《友達が泊まりにくるかも》
《そうなんだ? 明日もムリで、週末もムリだと、来週まで会えないね。寂しいな》
外国行っちゃったら、もっと会えないよ。
勝久くんになんて返事しようか考えるのも面倒になって、「もう帰ろう・・」って小さくつぶやいて、お店のレジに向かった。
「七千四百六十円になります」
卓ちゃんはやっぱりお金も払わずに帰ってた。二人分の代金を一人で払って泣きそうになる。店員さんが同情の目で美久を見てるみたい。
新宿駅の東口から地下への階段を覚束ない足取りで下りる。人の流れに逆らってるのか、流されてるのか、よく分からないくらいたくさんの人が行き来してる。その大勢の中を一人で歩く。
卓ちゃんと歩いて帰る道だったのに・・。
卓ちゃんと歩いたら楽しかったはず。
勝久くんが海外に行くって言わなきゃ楽しかったはず。
弘子がもうちょっと相談に乗ってくれてたら何か違ってたかも。
美久の周りは、美久のこと分かってくれない人ばっかり・・美久はただ・・幸せになりたいだけなのに。



