そう言って立ち止まった足のすぐ目の前を見上げると、見るからに古そうなラーメン店がキラキラと輝く夜の世界の隅っこに小さく存在していた。


「俺、ここの常連客」


「へ?」


そう言うとレンは暖簾を上にあげて、中へと入っていった。


私もレンの後に続いてラーメン店の中へと入っていく。


そこはレンが通ってるとは思えないほど、昔の風情が溢れているラーメン店だった。


「おぉ、いらっしゃい!」


カウンターの奥からレンに向かって声をかけたのは、もう60代くらいだろうか、白髪混じりの頭のおじさんだった。


「林さん、久しぶり」


レンはカウンター席に腰を掛け、私も自然とその隣に座った。


「今日はまたべっぴんさんを連れとるなぁ」


林さんと呼ばれたおじさんはレンによいよいと持っていた箸を突きつけた。


「可愛いだろ?俺のお気に入りなんだ」


そう言って私の方を見たレンはにやりと意地悪な笑みを浮かべた。


こういうのを大人の余裕と言うのだろうか。


レンはからかってるだけって分かっているのに胸がどんどん熱くなっていく。


バカみたいだと思う。


レンは私をからかっているだけ。


それなのに‥


私はそのレンの言葉1つ1つを本気にしてしまう。