レンは自分の左手に右手をポンっと置くと、何かをひらめいたように聞いてきた。


「あ、そういえば‥アンタの名前は?」


「え?」


「いや、ずっと聞いてなかったなって思ってさ」


「理枝。理性の理に枝」


「ふーん‥理性の枝か」


レンはふむふむと頷いていた。全然違うけどその姿がなんだか可愛らしくて、笑いそうになる口を必死で紡ぐ。


「理性の枝ってなによ」


「理性の枝は理性の枝だよ」


私達は笑いながら、昼間の新宿歌舞伎町を歩き回った。


レンの左手は私の右手をずっと掴んでいてくれて、離したりすることは無かった。


だから私もレンの左手を離すまいとぎゅっと握りしめていた。



「あのさ、レン?」


「んー」


「レンはどうしてホストになろうなんて思ったの?」


「ラーメン」


「え?」


「ほら、着いた」