レンは私の歩幅に合わせて、ゆっくり歩いてくれた。


そんな気遣いが嬉しくて、思わず口元が緩んでしまう。


私がずっと会いたくて探していた、あのレンが今隣にいる。


「ほら、ここが俺の店」


レンがそう言って視線を向けた建物に私も目を向ける。


全体が黒とグレーで配色されているとても綺麗で洒落ている建物だった。


その建物に掲げられている看板には白の筆記体で『club chose』と書かれていた。


店の前に置かれた看板には見覚えのある顔が載っていた。


それは紛れもなくレンの顔であって、その写真の上には金色で『No.1』と書かれていた。


「凄いだろ?俺ナンバーワン」


そう言うとレンはまたあの優しい微笑みを私に見せた。


分かりきっていたことなのに、また住む世界が違う現実を押し付けられた。


レンはホストなんだ。


そう自分に言い聞かせているのに、このやるせない気持ちはなに?