私は疲れきって重い足取りで、帰ってきた時に投げ捨てたカバンを勢いよく持ち上げ中をあさった。
財布からメモ用紙を取り出して、電話してしまおうか悩んだ。
もう一度会いたい。
会って色んな話をして、もっともっとレンのことをしりたい。
そんな気持ちが私を積極的にさせた。
携帯電話を手に取り、090‥と文字を打っていく。
胸の高鳴りがどんどん大きくなっていく。
自分でも音が聞こえるほど、壊れちゃうんじゃないかってほど、心臓はバクバク悲鳴をあげていた。
「はい」
少し低くこもったような声で電話に出たのは、紛れもないレンの声だった。
「あ、えっと」
「誰?」
「この間、新宿で助けて貰ったやつだけど」
「あぁ、どうしたの?」
レンはいたって冷静な対応で、私のガキ度を改めて実感した。
自分一人でなにをこんなドキドキしてんだろ。
ばかみたい。
「この前のお礼がしたくて」
つい口を先走ったのはそんなデタラメの嘘だった。
「あー別にいいよ」
「え?」
「ってことで、まだ仕事あるからまた‥」
「待って!どうしてもお礼したいの」
「だからいいって」
いきなりの低く冷たい声のトーンに背筋が凍りそうになる。
「じゃあ‥会いたい」
「え?」
