時刻、8時10分―
登校の時間にはまだ遠い。
気になって中を覗くと、
そこには、隣のクラスの
佐々木翔太がいた。
チャラそうで、軽そうで、
なんとなく苦手な部類の人だった。
でも、
たった一人でバスケットの練習を
している彼を見て、
なんていうか、グサリと来た。
動けないでいるあたしを
ちらりと目にして、
不思議そうな顔をする。
「なんか用事?」
「あっ、う…ううん!
なんでもない…です」
焦って挙動不審になるあたしに
ふ-ん、と一言。
それからまた一人、
練習を再開する。
キュッキュッとシューズがなって
バスケットボールの音がする。
登り始めたばかりの太陽が
体育館を照らした。
まぶしかった。
それからあたしは
毎朝体育館へ通うようになった。
朝は弱かったくせに、
ゲンキンな女だと思う。
あたしたちの間には
会話らしい会話なんてなかったけど
彼はあたしを邪魔者扱いなんて
しなかった。
2人の微妙な距離感が
居心地がよかった。
あたしは恋をしている。
キラキラの君に、
今、恋をしている―
